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2025/02/08

院長の気まぐれ投稿 vol.4「FIPについて」

毎朝冷え込みがきつく、寒さが応えますね。私は年末にコロナウィルス感染症にかかり、一家で寝正月となってしまいました。みなさんもお身体、お気を付けください。


さて、今でこそみなさんに周知されているコロナウィルスですが、実はワンちゃんやネコちゃんにもコロナウィルス感染症は以前から存在します。ワンちゃんでは混合ワクチンの中にも含まれており、ワクチン接種の際に内容説明をすると「へぇ~。」とリアクションをされることも多くなりました。


一般的には、ワンちゃん、ネコちゃんのコロナウィルス感染症は胃腸炎を引き起こすもので病原性はそれほど高くないと認知されていますが、ネコちゃんのFIP(猫伝染性腹膜炎)は非常に病原性が高く、獣医師であれば疑いを持った時点で緊張感の走る疾患の一つです。以前は診断したものの、様々な治療を施しても、元気にしてあげることができずに、私の経験では全頭がFIPを原因に亡くなってしまいました。


しかし近年、抗ウィルス薬の使用により、FIPに苦しむネコちゃんが寛解(症状の消失と病気を疑う検査所見の消失を言います)する報告が出てきました。これは飼い主様やネコちゃん達だけではなく、我々にとっても非常に喜ばしいことです。今までほぼ全頭が死亡していた病気が治る可能性が出てきたのですから。しかし、問題点はもちろんあり、治療実績がまだ少なく、新しい治療であるために長期的な副作用が不明であり、治療内容の不確実性を伴います。薬の流通の問題もあります。


先日、当院を受診されたネコちゃんにFIPと診断をしました。実はこの子は去勢手術のための術前検査で異常値が見つかり、手術を延期して、継続的な通院をしていく中でFIPの診断となったわけですが、診断をする頃には食欲、元気が落ち始めていました。もちろん私がFIPを疑っていることはお伝えしていましたから、飼い主様は非常に肩を落とされていたのですが、抗ウィルス薬を使用して数日の間に症状の改善がみられ、本当に喜ばれていました。


抗ウィルス薬を使用する際には、諸々の問題点を飼い主様と共有した上で、それらをご理解頂いてから治療にあたりますが、実際に私の目の前で劇的に症状が改善するその子の様子を見て、本当にこの治療をしてよかったと今は思います。10年、20年と、この先のFIPの治療成績が大きく改善していくことを切に願います。